株のデイトレードは職人芸です。そしてその中心に位置するスキルが歩み値です。
この記事では、本屋に売っている株本にはチョロっとしか書かれていない、歩み値の見方の真実を徹底的に解説します。
ティッカーテープ(歩み値)は、株式市場で行われている戦闘を見るための望遠鏡である。それは10回のうち7回は当てにできる。
伝説の相場師ジェシー・リバモアの言葉
19世紀の米国株式市場で活躍した伝説の相場師たちはみんなティッカーテープ(今でいう歩み値)に流れる大口注文を読み取って稼いでいました。
歩み値の有効性はチャートが主流になった今の時代でも同じです。
私自身も歩み値を駆使してデイトレードやスキャルピングをしています。
私の知る限り、株のデイトレーダーで長期的に成功している人で歩み値を全く使わない人は一人もいません。
あなたが株初心者でも、専業デイトレーダーでも
今すぐマスターしてもらいたい歩み値の見方、6つのコツです。
楽しみながら、株デイトレードをマスターしてください。
専業株デイトレーダーを目指すあなたのレベルを一気に引き上げてくれることでしょう。
目次
歩み値の基本の基本
もしあなたが株初心者なら、歩み値のことがよく分からないと思います。
私も最初はそうでした。
このセクションでは、歩み値の6つのコツを解説する前に理解しておいてほしい歩み値の基本的なことや予備知識を解説します。
このセクションでは以下のことをスッキリと理解できます。
- 株式市場や先物市場にはどんな注文方法があるのか?
- 歩み値にはどんな注文が表示されるのか?
- 歩み値にいま表示されたのは買い注文なのか、それとも売り注文なのか?
さて、歩み値はいったい何の役に立つのでしょうか。
そのためには、まず2つの注文の種類を知る必要があります。
- 指値注文
- 成り行き注文
指値注文
焦っていないトレーダーは指値注文を出します。
「この値段なら買ってもいい」
「この値段なら売ってもいい」
指値注文とは、のんびりと待ち、なるべく良い値段で約定させるための注文です。
指値注文は板情報に表示されます。
板情報に表示される指値注文は、「まだ約定していない注文」です。
ですから、ある瞬間に指値注文が入っていても、その注文はその後でキャンセルされるかもしれません。
逆に、大量の指値注文があとから追加されるかもしれません。
資金量の多い大口のトレーダーは板情報の見え方をある程度好きなようにコントロールできるということを覚えておいてください。
要するに、板情報に表示される指値注文を鵜呑みにしてはいけないということです。
成り行き注文
一方、焦っているトレーダーは成り行き注文を出します。
「どうしても今すぐに買いたい」
「どうしても今すぐに売りたい」
「どうしても今すぐに約定しなきゃいきない!」
成り行き注文とは、
「のんびりしているとエントリーチャンスを逃してしまう」
「のんびりしていると含み損が広がってしまう」
そういう状況で使う注文です。
成り行き注文は歩み値に表示されます。
ずらーっと約定した注文がならんでいます。
左から
約定した時間、約定した値段、約定した株数(先物なら枚数)
が表示されます。
最新の歩み値が上に上にリアルタイムで追加されていきます。
歩み値には実際に約定した注文だけが表示されます。
ですから、歩み値の見え方を自由にコントロールすることはできません。
成り行き注文は最良気配で約定する
基本的に、歩み値に流れる成り行き注文は、板情報に表示されている「最良気配」で約定した注文です。
最良買い気配というのは、一番高い買い指値注文です。
最良売り気配というのは、一番安い売り指値注文です。
いま成り行き注文を出したら約定する価格のことです。
成り行き注文が最良気配に入っている指値注文を全部喰えば、次の値段が最良気配になります。
歩み値の売り買いどっち?
歩み値をデイトレードやスキャルピングに活かすには、歩み値に流れる注文が、「成り行き買い注文」なのか「成り行き売り注文」なのかを見分ける必要があります。このセクションではその方法を詳しく解説します。
親切な業者の歩み値は歩み値を色分けして表示してくれます。
一般的な証券会社の歩み値は以下のようなルールで表示されます。
- アップティックの成り行き買い注文は赤色で表示される
- ダウンティックの成り行き売り注文は青色で表示される
- 1つ前の成り行き注文と同じ値段による約定なら白色で表示される
「アップティック」とはひとつ前に約定した成り行き注文よりも高い価格で約定することです。
逆に「ダウンティック」とは1つ前に約定した成り行き注文よりも低い価格で約定することです。
色の設定は証券会社によって違います。赤と緑などもありますので、各自使用しているツールの設定を確認しておくようにしてくださ。
歩み値は上に上に新しい注文が表示されていきます。
一番上が最新の注文で、一番下が古い注文です。
赤色の } で印をつけてある部分が成り行き買い注文です。
それ以外は成り行き売り注文です。
古い約定注文から順番に流れを追ってみましょう。
一番下の行に表示されている1790の300株は青色ですので成り行き売り注文です。
その上の赤色で表示されている1791の200株は赤色ですので成り行き買い注文です。
この時、板情報の最良買い気配、最良売り気配はどんな状態だったでしょうか。
頭の中で想像してみてください。これができることが歩み値を株デイトレードやスキャルピングに活用する鍵になります。
売り 価格 買い
20000 1791
1790 20000
この状態からスタートしたとしたら、先程の2つの成り行き注文が約定することにより以下のようになります。
もちろん、追加で指値注文が入らなければですが。
売り 価格 買い
19800 1791
1790 19700
まず最初に1970円の買い指値注文に300株の成り行き売り注文がぶつけられて買い指値注文が20000株 → 19700株に減少します。
そして次に1971円の売り指値注文に200株の成り行き買い注文がぶつけられて売り指値注文が20000株 → 19800株に減少します。
このような板の状況を歩み値から想像できることが重要です。
さて、続きも見てみましょう。
1791円の200株の成り行き買い注文(赤色)の上の7行は白色で表示されています。
これは、さっきと同じ値段で約定したということです。
この場合だと、1791円の売り指値注文に対し連続して追加で7回の成り行き買注文が約定したことを示しています。
7回分を合計すると10200株の成り行き買い注文が入ったことが分かります。
板はこんな感じになったことでしょう。
売り 価格 買い
9600 1791
1790 19700
1791円の19800株の売り指値注文に対して合計で10200株の成り行き買注文がぶつけられたので、19800株 → 9600株になっています。
実際には指値注文が追加で入ったり、キャンセルされたりするのでこの通りにはなりません。
売り板にアイスバーグ注文という大口トレーダー特有の指値注文がセットされている場合なんかは特徴的です。
同じ価格で成り行き買注文がバーッと流れているのに、株価が上がらないんです。
さっきの例だと、売り指値注文に9600株の売り指値が残っていますが、ここからさらに3万株ぐらい1791円に買注文がぶつけられているのに株価が上がらなかったら、それはおかしいですよね。
1791円に売り指値注文を追加して、成り行き買い注文を吸収している大口がいるというのに気づくことができます。
板情報と見比べながら歩み値を見ていると、大口のやっていることが見破れる瞬間があります。そういう時が大きなチャンスになります。
歩み値で成り行き売り注文と成り行き買注文を見分ける方法は以上です。
ここまでの解説で、歩み値や板情報の基本は理解できました。
いよいよ歩み値の見方の具体的な方法を解説していきます。
歩み値の見方 6つのコツ
この解説を読めば、歩み値のどこに注目すべきなのかが分かるようになります。
注目すべきポイントが分かれば、次のような判断ができるようになります。
- 相場はここで反転しそうなのか?
- 相場はここからブレークアウトしていきそうなのか?
- これは押し目なのか、それとも反転したのか?
- これは一時的な戻しなのか、それとも反転してしまったのか?
知りたくないですか?
続きを読めば理解できます。
歩み値のスピードを読め
1つめのコツは、「歩み値のスピードを読む」ことです。
歩み値には一つのわかりやすい法則があります。それは…
株式相場でなにかが起こるとき、歩み値が騒がしくなるということです。
騒がしくなるというのは、歩み値に新しい注文が表示されるペースが上がるということです。
相場が反転したり、意識されている価格帯をブレークアウトする直前には歩み値が急激にスピードアップするのです。
なぜでしょう?
それは参加している株デイトレーダー達の感情です。
「恐怖」や「欲望」といったトレーダー心理が極限に達すると、彼らは一斉に成り行き注文を出します。
それは含み損が膨らんで耐えられなくなった時のロスカット注文かもしれません。
それとも、相場の動きに乗り遅れたくない人のエントリー注文かもしれません。
これはとても大切なことなので必ず覚えておいてください。
相場で何かが起こるのは、テクニカル指標がなんらかのシグナルを発したからではありません。
そこに参加している株デイトレーダー達の感情がピークに達したからです。
私の言うことを信用してもらえないかもしれません。
ピットオーディオの例を紹介しましょう。
米国には先物取引の立会場があります。立会場のことをピットと呼びます。
立会場で取引するトレーダーもいれば、インターネットで取引するトレーダーもいます。
立会場(ピット)とはトレーダーどうしが口頭で取引を成立させる騒がしい場所です。
その「ピットの騒がしさ」の度合いが売買シグナルになるというのです。
インターネットで取引するトレーダーのために、立会場(ピット)の音声をリアルタイムで配信するサービスがあるくらいです。
この動画ではピットの騒がしさと、歩み値のスピードアップがほぼ同時に起きているのがわかると思います。たしかに、ピットの音声はトレードに役立ちそうです。
日本の株式市場には立会場は無く、全てが電子取引ですから、「ピットの騒がしさ」を知るには「歩み値のスピード」を読むことになります。
歩み値のスピードアップは次のうちのどちらかを表しています。
- 何かが終わろうとしている(相場の反転)
- 何かが始まろうとしている(ブレークアウト)
歩み値のスピードを読んで逆張り
サポートラインで反転するのを予想して逆張りで買うつもりなら、サポートライン付近で歩み値の急激なスピードアップが出るまでは待ってください。
そして歩み値の騒ぎがピタッと止まったときがエントリーチャンスです。
歩み値のスピードを読んでブレークアウト
小幅なレンジでしばらくうだうだとした後、歩み値のスピードが急激に上がったら、それはブレークアウトが起きる前兆である場合が多いです。
ただ単にレジスタンスラインやサポートラインを抜けたからブレイクアウトというのではなく、その時の歩み値のスピードアップの度合いにも注目すると、エントリーの精度が上がります。
歩み値のサイズ
歩み値のサイズとは、歩み値に流れる成り行き注文の大きさのことです。
大きな注文は大口トレーダーの成り行き注文です。
それに対し、小さな注文は小口の一般投資家の注文です。
一般投資家は大口トレーダーの罠にはめられて損をすることが多いです。
それならば、大口トレーダーと同じ方向にトレードすればうまくいくと思いませんか?
2つのことを覚えておいてください。
- 小さなサイズの注文が勢いよく歩み値に流れるのを待ち、その動きに逆張りすると上手くいきやすい
- 大きなサイズの注文がまとまって歩み値に出てくるのを待ち、それと同じ方向にエントリーすると上手くいきやすい
私はこの2つのことをいつも意識しています。
チャートで株価が上がっているのを見て買いたくなっても、小さいサイズの買い注文ばかりなら買うのを見送ります。
しかしその時に大きなサイズの買い注文が連続して出ているなら買いを狙います。
大口の方向に順張りし、小口の方向に逆張りする。
必ず覚えておいてください。
歩み値の支配権の変化
サッカーやバスケットボールでは「ボールの支配権」という言い方をします。
より長い時間ボールをキープしている方のチームが押していることになります。
株のデイトレードでも同じです。
大口の成り行き買い注文が大口の成り行き売り注文よりも多ければ、買い方が相場を支配しているということです。
サッカーなどの試合で、攻めているチームが急にボールを奪われて攻守が入れ替わると、責めていた方のピンチになります。
これも株のデイトレードに当てはめることができます。
レジスタンスライン(抵抗線)の付近で積極的に買われ、歩み値が成り行き買い注文でいっぱいになっているとします。この状態を「買いの支配」と私は呼んでいます。
その直後いきなり大きな売りが入ってきて、歩み値が成り行き売り注文一色になると、それは「歩み値の支配権」が急激に移り変わったということです。これは空売りのチャンスとなります。
何事も同じですが、不意を突かれるとこたえるものです。
歩み値の結果
歩み値に大きな買い注文が連続して流れているのに、株価がほとんど上がらず、大きな成り行き買い注文の結果が出ないことがあります。これは何を意味しているのでしょうか。
これは大口の成り行き買い注文が、他の大口トレーダーに吸収されているということです。
板に出ている売り指値注文が全部買われたのに、次々と売り指値注文が追加され、なかなか上げられないような場合です。
この時、先程解説した「歩み値の支配権の変化」が起きて大口の成り行き売り注文が出始めたら、買い方はものすごく焦ります。
そこからさらに下げたら、買い方の大きなロスカット注文が出てくることを予測することができます。
これは歩み値を見ていない人には見えない情報です。
ボーっとしている人が見えない情報を見た時に迅速な行動を取れる人には大きな優位性があります。
歩み値のやる気
歩み値と板情報を注意深く観察していると、買いや売りに「やる気がある」「やる気がない」を見極めることができます。
買い方にやる気がない場合には次のような現象が起きます。
- 最良売り気配に入っている株数が少ないのに、買い手はそこを全部買ってしまうことができない
- 最良売り気配に入っている株数を全部買ったのに、その値段に買指値注文を積み上げることができず、すぐに売りに奪回されてしまう
逆に買い方にやる気があるときには、最良売り気配に入っている株数が少なければすぐに全部買ってしまい、その値段に買い指値注文を積み上げることができます。
防御が手薄な相手の陣地を占領したら、そう簡単には奪回させないということです。
このように、最良気配に入っている指値注文が少ない状態の時にどんな反応をするかによって買い方と売り方の「やる気」を測ることができます。
歩み値に現れる大口のあきらめ
大口の注文と同じ方向にエントリーすべきだと解説しました。
しかしその根拠となった大口が降りたなら、あなたも一緒にあきらめるべきだというお話です。
5万株の成り行き買い注文が歩み値に出たとして、それを根拠としてあなたも買いエントリーしました。
その直後、5万株の成り行き売り注文が歩み値に現れました。
その場合、「大口トレーダーがあきらめたのではないか?降りたのではないか?」と読み、自分も売ってしまうのが無難です。
株デイトレーダーとして常に肝に銘じて起きたいことは
エントリーの根拠が崩れたら、すぐにエグジットしろ
です。
歩み値を読めると、その判断を迅速に行うことができます。
チャートしか見ていないトレーダーが大きなロスカットになるよりもずっと前に、その前兆を歩み値から読み取り、早期撤退することができます。
以上、株初心者にも是非覚えていただきたい歩み値の見方6つのコツです。
「6つもあると覚えられないよ!」
と言われそうですね。
安心してください。
いきなり全部意識する必要はありません。
これらのうちの1つか2つを意識できるだけで随分と変わってきます。
まずは「歩み値のスピード」「歩み値のサイズ」「歩み値の支配権の変化」の順に取り組んでください。
株デイトレーダーとして、あなたが成功できることを応援しています。
サンチャゴ
株初心者でも解る歩み値の6Tips まとめ
株のデイトレードは職人芸である。
株初心者も株上級者も全ての人がマスターすべきスキルは歩み値である。
歩み値は伝説の相場師ジェシー・リバモアの時代から使われてきたツール。
マスターするには時間がかかるが、今も昔も機能し続けている。
株式市場の注文方法には、「指値注文」と「成り行き注文が」がある。
指値注文は板情報に表示される。
成り行き注文は歩み値に表示される。
板情報の見え方は大口トレーダーが好きなようにコントロールできる。
歩み値は実際に約定した注文だけが表示されるので、「確かな情報」と言える。
歩み値に表示された注文が買いなのか売りなのかを見極める必要がある。
歩み値の見方のコツは6つある
- 歩み値のスピード
- 歩み値のサイズ
- 歩み値の支配権の変化
- 歩み値の結果
- 歩み値のやる気
- 歩み値に現れる大口のあきらめ
これらをマスターすれば、
- 相場はここで反転しそうなのか?
- 相場はここからブレークアウトしていきそうなのか?
- これは押し目なのか、それとも反転したのか?
- これは一時的な戻しなのか、それとも反転してしまったのか?
といったことが分かるようになる。